歯根破折の保存治療
歯根破折とは?

歯根破折は歯の根にヒビが入っているもしくは歯が割れている状態を指します。歯を失う原因としては、歯周病や虫歯が多いというのは認知されていますが、実は次いで多いのが歯根破折になります。
歯根破折は、抜髄(感染した歯の神経取る治療)をしたことによって、失活歯になった歯が割れるケースが多く、噛む力に耐えられないことが主な理由であると考えられます。
歯根破折の原因
歯根破折にはいくつか原因が考えられます。
- 抜髄した歯(神経を取ってしまった歯)がある
- 歯ぎしり、食いしばりがある
- 不適合な土台や補綴物による過度に応力を受けている
- 噛み合わせが最適でない
このような原因で歯根破折になっていることが多いです。
つまり、歯の強度が保てずに歯根破折してしまうことが概ねの理由であると言えます。
歯根破折の痛みなどの症状について

歯根破折の場合、ご自身が鏡で確認してもわからないことが多いです。
認的な症状はなく、しみる・噛むと痛い・炎症を起こし膿が出る・歯がぐらつくなどの違和感や痛みによる症状が多いです。
歯根破折の治療:口腔外接着再植法
歯根破折している歯を一度意図的に抜歯します。
口腔外で抜歯した歯を処置、接着を行い修復した後、歯を戻します。詳しくは症例で解説致します。
Case1:歯根破折した歯を戦略的に抜歯をして、口腔外接着再植法にて歯を残した(延命した)ケース
50代 女性
術前
上顎の第二小臼歯が垂直破折のため他院にて抜歯と言われたが、保存を強く希望され、来院されました。歯根は真っ二つに完全に割れていましたが、スーパーボンドによる接着再植法による保存を試みました。

2014年2月

2014年2月
術中
スーパーボンドによる接着後、エムドゲイン(歯周組織再生材料)を塗布し、再植を行いました。


術後
その後、メタルコア(支台装置)を装着し、連結されたセラミッククラウンを 装着しました。

2014年9月

2014年9月
Case2:失活歯の垂直性完全破折症例(下顎の小臼歯)
術前


術中

完全破折していたため汚染部を洗浄

スーパーボンドにて接着後エムドゲイン塗布

オペ終了時(再植)の状態

オペ終了時のレントゲン

最終印象時の支台歯の状態

完成したジルコニアクラウン
術後

ジルコニアクラウンセット時(5番6番連結)

セット時のレントゲン写真
術後経過約5年

術後約5年経過した状態

レントゲン写真
症例概要
| 年齢・性別 | 50代 女性 |
|---|---|
| 主訴 | 他院にて歯根破折のため抜歯しないといけないと言われた |
| 治療内容 | 歯後、口腔外にて破折歯をスーパーボンドにて接着。 その後エムドゲインを塗布し、再植 |
| 治療期間 | 他の治療も含め、約半年 |
| 治療費用 | 再植:110,000円(税込) 支台築造:22,000円(税込) ジルコニアクラウン:132,000円(税込) |
| 治療リスク | 経過の中で予後不良となる場合がある |
Case3:生活歯の近遠心的破折症例(上顎大臼歯)
術前

術中

抜髄時の破折状態

根管充填時のレントゲン

歯根分割した状態

最終印象

完成したジルコニアクラウン

術後

ジルコニアクラウンセット時

セット時のレントゲン写真
症例概要
| 年齢・性別 | 40代 男性 |
|---|---|
| 主訴 | 右上割れている奥歯を残したい(セカンドオピニオン) |
| 治療内容 | 根管治療後、支台築造、歯根分割し、ジルコニアクラウンにて頬側根と口蓋根を連結保存 |
| 治療期間 | 約2ヶ月 |
| 治療費用 | 再植:110,000円(税込) 支台築造:22,000円(税込) ジルコニアクラウン:165,000円(税込) |
| 治療リスク | 分割部位(中央部)の清掃性の問題 |
Case4:失活歯の垂直性破折症例(下顎)
術前

術中

頬側のみ破折線あり

口腔外で接着、エムドゲイン塗布

180°回転させて再植

オペ後の状態

オペ後のレントゲン
術中(最終補綴時)

最終印象時の支台歯の状態

ジルコニアブリッジ
術後

ジルコニアブリッジをセットした状態

最終のレントゲン
症例概要
| 年齢・性別 | 60代 男性 |
|---|---|
| 主訴 | 垂直破折しているので、抜歯してインプラントか義歯と言われたが、できれば歯を残したい(セカンドオピニオン) |
| 治療内容 | 抜歯後、口腔外にて破折歯をスーパーボンドにて接着。エムドゲインを塗布し、180°回転させ再植 |
| 治療期間 | 約4ヶ月 |
| 治療費用 | 再植:110,000円(税込) 支台築造:22,000円(税込) ジルコニアブリッジ(4歯):528,000円(税込) |
| 治療リスク | 経過の中で予後不良となる場合がある |
Case5:上顎前歯部頬側パーフォレーション(切削器具による穿孔)症例
術前

歯肉にフィステルが認められる
術中(オペ時)

約3mm程度の穿孔と骨欠損が認められる

抜歯した状態

穿孔部位をスーパーボンドにて封鎖

180°回転させて再植

オペ後の状態

オペ後のレントゲン
オペ後3ヶ月の状態

最終印象前のプロビジョナルレストレーション(仮歯)の状態

ジルコニアクラウンを装着した状態
術後

スマイルの状態

最終のレントゲン
症例概要
| 年齢・性別 | 30代 女性 |
|---|---|
| 主訴 | 抜歯と言われた歯を保存したい(セカンドオピニオン) |
| 治療内容 | 抜歯後スーパーボンドにて、穿孔部を封鎖。エムドゲイン塗布後、180°回転させて再植。 |
| 治療期間 | 約4ヶ月 |
| 治療費用 | 再植:110,000円(税込) 支台築造:22,000円(税込) ジルコニアクラウン(レアリング):143,000円(税込) |
| 治療リスク | 経過の中で予後不良となる場合がある。 |
歯根破折で抜歯と言われても諦めないでください
歯根破折しているので抜歯と言われても諦めないでください。歯を残せる可能性があります。
一方で、歯の状態もしくは口腔内の状態を見たときに保存することがリスクになる場合もありますので、十分にご説明を行い、患者様の同意を得て治療に進みます。
歯を残したいと考えましたら、一度当院へご相談ください。