歯根破折した歯を接着治療で保存する

歯根破折した歯を残すことはできるのか?

歯根破裂口腔内

歯根破折断面

この写真は垂直に歯根破折をした代表的な症例です。 結論からお伝えすると、この破折歯は意図的再植術(口腔外接着治療)によって、保存することができました。

歯根破折した歯を残すことはできるか?と質問された時の返答としては、 「残すことはできるけれど、条件があります。」ということになります。

この症例のように破折歯を保存することが可能なケースと保存が難しいケースが存在します。

このページでは歯根破折の概要と治療の選択肢、歯の保存の可否についてご説明致します。

歯根破折の原因と治療の現状

そもそも歯根破折とはなにか?というと、歯の根が割れてしまうことです。 歯がしみる、噛むと強い痛みがある、歯肉が腫脹しているなどの症状を感じ、場合によっては、噛む時の違和感や歯肉から膿がでることもあります。

概ね、咬合力(噛む力。歯ぎしり・食いしばりなど)に耐えることができずに、破折してしまうケースがあります。特に歯の神経を抜いてしまっている歯に多い傾向があります。

厚生労働省のデータでも17.8%が破折によって歯を失ってしまうというデータが出ています。

グラフ

破折歯の治療法は虫歯や歯周病のようにコンセンサスの取れた治療法がないため、「抜歯一択」というのが現状です。当院では抜歯一択の選択肢ではなく、保存という選択肢を示せるように日々の臨床を行っています。

当院が行う歯根破折の治療について

当院では歯根破折=抜歯という選択肢だけではなく、保存できる条件が揃っていれば、意図的再植術(口腔外接着治療)を用いて、歯根破折の歯を保存していきます。わかりやすくご説明するために、冒頭の症例を用いて解説します。

歯根破折を意図的再植術(口腔外接着治療)で歯を保存した症例

こちらは垂直破折している歯で、抜歯を宣告されてしまったけれど、何とかして残せないかとセカンドオピニオンにいらしたケースです。一度戦略的抜歯を行い、口腔外で感染部の除去を行いました。歯根膜を乾燥させてしまうと歯根膜の機能の恩恵を受けられないため、正確且つスピーディーな治療が求められます。

破折歯をスーパーボンドで接着し、エムドゲインゲルという歯周組織再生材を塗布して再植しました。

最終的に土台を立て、連結したセラミッククラウンを装着して治療を完了しました。検査して、歯が保存できると判断出来た場合は、このような治療で歯を保存していきます。

破折歯の保存の成功ケースと保存不可のケース

歯根破折した歯のすべてを保存することができるとは限りません。
保存が成功しているケースと失敗しているケースに分けてご説明します。

歯根破折で保存が成功しているケース

  • 歯質がしっかりしている:抜髄から間もない、感染が少ない
  • 垂直的に破折している
  • 歯根が複雑ではない

保存不可なケース

  • 抜髄してからかなりの時間が経過している
  • かなり感染している状態である
  • 複雑に破折している
  • 水平に破折している

保存不可な場合の選択肢

検査の結果、保存が不可だった場合は抜歯をしなければなりません。その場合は、ブリッジ・インプラントといった治療だけでなく、自家歯牙移植というご自身の歯を移植する方法もあります。

自家歯牙移植も条件がありますが、ご自身の歯で過ごしたいと思われている方には、大切な選択肢です。

自家歯牙移植